平成12年人口動態統計によると、脳血管障害の死亡数は132,529人であり全死亡の13.8%を占め第3位である。総患者数は約150万人に上る。また平成11年度国民医療費の概況によると総医療費24兆円の中で脳血管障害が2兆円で第2位であり、さらに要介護となった原因の約3割を脳血管障害が占めるなど、国民の保険衛生上重大な問題となっている。このような現状の中で脳血管障害治療ガイドラインがいくつかの関連学会が合同で作成されており、近日中に発表される予定である。
 最近の画像診断法の進歩は目覚しいものがあり、脳血管障害の領域においてもMRI/MRA、MRIの特殊撮像法である拡散強調画像、マルチスライスCTなどが出現したが、一方ではその適応が正しく理解されていないための混乱も頻繁に生じている。不必要な検査の実施、診断方法の不適切な選択は、その結果としての患者アウトカムへの否定的な影響、あるいは医療被曝および医療費の増加等に結びつく可能性がある。よって明確な画像診断の指針を示し、それに従って診療を進めていくことが今求められている。
 現在、ガイドライン作成に当たっては、国際的に標準的な方法とされている「根拠に基づいた医療Evidence-based Medicine」の手順に則って作成することが基本原則とされている。すなわち、根拠を明示しないでコンセンサスに基づく方法は、できる限り採用しないこととされている。しかしながら画像診断ガイドライン作成に当たって、実際上はいまだエビデンスのない診療行為も多く、特に画像診断領域においては、アウトカム評価が極めて難しい、特異度や感度は検索可能だがどのような検査の組み合わせが有効かについてエビデンスを探すのが難しい、など多くの困難性があるため、エビデンスに基づく包括的な画像診断ガイドラインは存在しないのが実情である。たとえば放射線科専門医会の事業である画像診断ガイドラインは主として専門家の勧告を反映したものであり、また米国放射線科専門医会の作成した放射線診療のスタンダードもEBMに基づくものではない。
 本ガイドラインの目的は、診療の現場で実際に画像診断に携わる放射線科医が、健康アウトカムの改善まで視野に入れて、現時点においてもっとも合理的と思われる脳血管障害の画像診断の適応や適応順序をエビデンスに基づき明確にし、臨床医の日常業務の指針とし、日常業務を援助する。これを通して、医療被曝の低減、医療レベルの地域差の解消と医療の質の確保を目指し、国民の福祉に寄与することである。

産業医科大学 放射線科 興梠征典 (ワーキンググループ委員長)

Last updated: 10/12/02